インプラント治療では上部構造と呼ばれる人工歯をアバットメントに取り付けます。
人工歯は食べ物を噛むため、丈夫であることが欠かせません。また、仕上がりの見た目を良くする観点から、自然な白さの美しい歯を演出できるかどうかも重要な要素です。
丈夫、かつ、自然な白さ&美しさを演出できる素材として、現在はセラミックが人工歯の素材として一般的に使われています。
今回はインプラントの人工歯に使われるセラミックの性質・特徴、および、セラミックの種類についてご説明します。
目次
■そもそも、セラミックとはどんな素材なの?
◎無機物の粉末を高温で焼き固めた物
セラミックとは、土や石、ガラスや金属などの無機物の粉末を高温で焼き固めた物の総称です。
古くは粘土や珪石を原料に瀬戸物の陶器が作られていました。現在も日本を含むアジア諸国をはじめとして、世界中で陶器の食器や芸術品が作られています。
■歯科用のセラミック素材について
◎歯科素材として用いるのは「ファインセラミックス」
さまざまな無機物の粉末から作られるセラミック。数多くの種類がある中でも、歯科素材として用いるのは高性能セラミックである「ファインセラミックス」です。
ファインセラミックスは従来のセラミックよりもしなやかさ(適度な弾力性、丈夫さ)と美しさを向上させたセラミックです。歯科素材のほか、医療用、半導体、自動車の部品、産業機械などの分野でファインセラミックスが用いられています。
[ファインセラミックスの原料となる無機物粉末の種類]
・ガラス粉末(炭化ケイ素系ガラス粉末)
・アルミ粉末(酸化アルミニウム(アルミナ)粉末)
・ジルコニア粉末(酸化ジルコニウム(安定化ジルコニア)粉末(※))
上記3つが歯科用セラミックの主な原材料です。
(※)安定化ジルコニア・・・レアメタルの一種であるジルコニウムに安定化剤(イットリ
ウム、カルシウム、マグネシウムなど)を加えて溶かし固めた(固溶させた)酸化物。
安定化ジルコニアは歯科素材など、さまざまな分野で用いられる。
◎セラミックは身体に馴染みやすい素材
セラミックは生体親和性が高く、身体に馴染みやすい素材です。
ペースメーカーの部品や人工関節など、生体親和性が高いセラミックは医療用素材として幅広く用いられています。
◎セラミックは吸水性が低く、着色・劣化を起こしにくい
吸水性とは、物質の水の吸い込みやすさを指す言葉です。
セラミックは吸水性が低く、着色・劣化を起こしにくいです。セラミックを用いることで、長年使い続けても着色・劣化しにくい人工歯を作製できます(※)。
(※)セラミック製人工歯の白さ・品質を保つためには
毎日の歯みがき+歯間清掃によるセルフケア、および、
歯科医院で定期的に受けるメンテナンスが必須です。
■インプラントの人工歯に用いられるセラミックの種類
◎長石ガラス系、ガラス系、ジルコニア系、レジン系など、種類はさまざま
インプラントの人工歯に用いられるセラミックには以下のような種類があります。
①長石ガラス系 透明度が高く、もっとも歯の白さの色調の再現性に優れて
いる
②ガラス系 非常に透明度が高く、しなやかな丈夫さを持つ
③ジルコニア系 非常に強度が高く、金属と同程度の硬さを持つ
④レジン系 プラスチック樹脂とセラミックを混ぜた物 比較的安価に
人工歯を作製できる
①長石ガラス系
長石ガラス系とは、アルミノケイ酸塩(カリウムを含む)(長石の成分)や石英(二酸化ケイ素)を原料とするガラスセラミックです。代表的な物にはポーセレンセラミックがあります。
ポーセレンは透明度が高く、セラミックの中でもっとも歯の白さの色調の再現性に優れています。
高い美しさを持つ反面、ポーセレンは強度が低く(80~120MPa前後)、そのままでは衝撃に弱いため、金属製のメタルフレームやジルコニアフレームの上にポーセレンを焼き付けて人工歯が作製されます。
{天然歯の強度(硬さ)はどれくらいなの?}
天然歯のエナメル質の曲げ強度(Mpa:メガパスカル)は80~90程度です。ただし、物質の硬さを測るビッカース硬度(HV:ビッカース)は270~400であり、エナメル質は人体の中でもっとも硬い組織です。
{なぜ、セラミックの硬さはHVではなくMPaなの?}
セラミックの硬さを測る曲げ強度(MPa)とは、物質に曲げ荷重をかけたときの亀裂や破壊に対する応力(耐えられる力)を示す尺度です。歯科素材など、日常生活で使われるセラミックは単に硬さのみではなく、荷重(噛んだときの力)に対する耐久力を測ることが重視されます。このため、歯科素材として用いるセラミックの硬さは曲げ強度であるMPaで測ることが一般的です(※)。
(※)歯科素材以外ではセラミックの硬さを測る際にビッ
カース硬度(HV)やロックウェル硬さ(HR)など、
曲げ強度(MPa)以外の尺度を用いることがあります
強度が低いため、ポーセレンは美しさが重視される前歯の人工歯に用いられます。噛む力がかかる奥歯の人工歯にはポーセレンの適応は難しいです。
②ガラス系(ニケイ酸リチウムガラス)
ガラス系とは、ガラス結晶に加えることで透明度を保ちながら強度を高めたセラミックです。代表的な物にはニケイ酸リチウムガラスを加えて作られたe-max(イーマックス)があります。
e-maxはガラス結晶により非常に透明度が高く、ガラス由来のしなやかな丈夫さ(適度な弾力性:400MPa前後)も兼ね備えています。
美しさと丈夫さを兼ね備えているため、e-maxは前歯から奥歯、すべての位置の人工歯に適応できます(※)。
(※)歯ぎしり・食いしばりの癖がある方、噛む力が強い
方には奥歯にe-maxを適応できない場合があります。
③ジルコニア系
ジルコニア系とは、金属であるジルコニウム鉱という鉱石を原料に作られたセラミックです。
素材は金属ですが、酸化によって結晶が変化するため、ジルコニアはセラミックの一種に分類されます。ジルコニアが原因で金属アレルギーを起こす心配はほぼありません。
ジルコニアは白い金属と呼ばれるほど強度が高く、金属と同程度の硬さ(600~1500MPa前後)(保険の銀歯は650~800MPa前後)を持ちます。強度の高さから、ジルコニアは人工ダイヤモンドの素材としても用いられています。
ジルコニアにはさまざまな種類があります。
従来型のジルコニアは歯の白さの色調の再現性に多少、劣ります。現在は、光を良く通して透明度が高く、丈夫さを兼ね備えた高透光性のジルコニアが登場しています。
強度が高いため、ジルコニアは前歯から奥歯まで、すべての位置の人工歯に適応できます(※)。
(※)色調の再現性に多少劣るため、従来型ジルコニア(従来型
フルジルコニア)は原則として奥歯への適応となります。
④レジン系
レジン系とは、プラスチック樹脂のレジンとセラミックを混ぜて作られたセラミックです。ハイブリッドセラミックとも呼ばれます。
レジン系のセラミックは人工歯を作製しやすい点が特徴です。レジンを混ぜていることから比較的安価であり、全体の治療費を安く抑えられるメリットもあります。
作製しやすい・安価というメリットがある一方、レジン系セラミックはあまり強度が高くありません(190~300Mpa前後)。美しさの面でも、プラスチックの混合素材のため、素材すべてがセラミックの人工歯と比べて歯の白さの色調の再現性に劣ります(人工歯が白く浮いているような見た目になりやすい)。
そのままでは強度が不足するため、金属製のフレームにレジン系セラミックを盛り付けて人工歯を作製するのが一般的です。人工歯全体をレジン系セラミックで作る場合もありますが、強度の問題や歯の色調の再現性の低さから現在では素材すべてがレジン系セラミックの人工歯はほとんど使われなくなっています。
レジン系セラミックの人工歯は主に前歯に用いられます。歯ぎしり・食いしばりの癖がある方や噛む力が強い方に対しては奥歯への適応が難しい場合も。
■現在はジルコニア製の人工歯が主流に
◎美しさと強度を兼ね備えた高透光性ジルコニアの人工歯が普及
以前は、強度を保つため、金属製のフレームにセラミック(ポーセレンやレジン系セラミックなど)を盛り付けてある人工歯(メタルボンド)が用いられた時代もありました。
しかし、金属アレルギーや美しさ(中の金属が黒く透けて見えることがある)の問題から、今では金属フレームの人工歯はあまり用いられなくなっています。
現在、インプラント治療で用いる人工歯の素材は美しさと強度を兼ね備えた高透光性のジルコニアが主流です。高透光性ジルコニアは強度の高さに加え、光を良く通すため透明度が高い点が特徴であり、従来型ジルコニアの問題点である色調の再現性の低さを克服しています。
高透光性ジルコニアが主流になっていますが、審美性の高さから、長石ガラス系(ジルコニアフレーム+ポーセレンorアルミナのオールセラミッククラウン)、ガラス系(e-max)など、ジルコニア以外のセラミックを人工歯の材料として用いるクリニックもあります。
【インプラントに関するご不安・ご質問がある方はお気軽にご相談ください】
神奈川県小田原市の白山歯科クリニックではジルコニア製人工歯によるインプラント治療を行っています。
院内に設置したGALAXISインプラントシミュレーションシステム(シロナ社の歯科用CTシロナXG3D+オステム社のワンガイドシステムの連携)により、それぞれの患者様に歯並びや顎の形状に適したジルコニア製人工歯を作製・ご提供しております。
美しさと強度を兼ね備えたジルコニア製人工歯により、治療後は硬い物もしっかり噛んでお食事を楽しめます。高透光性ジルコニアのため、仕上がりの見た目は自然の白さの歯に近く、口元のコンプレックスが解消される効果も期待できます。
– インプラントの無料相談を実施しています –
白山歯科クリニックでは、30年以上のインプラントの治療実績がある日本口腔インプラント学会所属の院長が手術を担当します。これまでに行ってきた数多くの治療の経験に基づき、骨造成や難症例にも対応可能です。
歯を失い食べ物をしっかり噛めない方、インプラントのクリニック選びでお困りの方は当院までお気軽にご相談ください。相談費は無料です。
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